遂に完成!じんのひろあき監督最新作「うたかたの日々」そして…

『ラストキャバレー』(1988)
『ノーライフ・キング』(1989)
『櫻の園』(1990)
『シャニダールの花』(2013)
『唇からナイフ』(2019)
and…

SPECIAL REPORT
#じんのひろあき 監督の最新作「  #うたかたの日々」を鑑賞。

近藤啓ニ(映画監督)

感想が山のように出てきて、鑑賞直後からじんの監督と話し込む。
できれば、映像制作のスタッフさんたちと一緒に観て、この映画が「何にタッチしたのか」を語り合いたい。おそらく、コロナ以降の映画で重要になるものを、映像の性質というものを再認識したうえで、適格かつ最速で映像化している作品だと思う。
それは「目の前に広がる現実の、何に直感するか」だ。
「うたかたの日々」は都市の風景だけで構成された映画だ。
いわゆる明確な起承転結、三幕構成を持った物語はなく、感情移入に用意された登場人物などは出てこない。ひたすらコロナ過に浸された東京の、クリスマスイブの情景が写されていく。
アフターコロナの映画はこの苦境の時間を描くため、いろいろと試行錯誤していくことになる。そのほとんどが病床での絆を描いたり、パンデミックを防ごうと奔走する英雄、マスク姿のアニメキャラ、進化しては大挙してくるゾンビそれに類する、映画の定型で描くものかもしれない。
そこにはコロナの時間が、象徴的、比喩的に描かれていくだけで、「今何を我々は感じているか」は決して描かれないという気がしている。
映画は「目に見えるものしか描けない」という根本的な誤解があるように思う。これがどんどん説明過多になり、とにかく形でお客の目にふれさせなきゃ、という思い込みが神経症的な表現絶対主義教になっている。どれだけド派手なシーンがデジタル上で精密に描かれても、そこにはなにも描かれてない感が強まる人たちがいるのは、何かが足らない、その何かが不可視不可触のため説明できないからだ。

本来「映画は映像ではない」はずだ。
もはや映画は描くべきものがない。役者が変わるだけで、バットマンやスパイダーマンがリメイクされ続ける。バットマン、何回やるんやろうか。バートン版の黒いビジュアルは画期的な発明だったが、30年近くそれにぶら下がって、未だ目の周りを黒く塗った俳優が低い声で、なんか言ってる。ジョーカーの進化に比べると、あれでいいのかと思う。
もはやインフレ的に向上する映像技術だけしかなく、映画はどこに描くものを探し当てるべきかとも常々思っていた。映画そのものが重要ではなく、目に見えるだけの現実に辟易していた人間が、自分の現実を強制的に見せてやるというのが映画だったりしたはずなので、いまや形だけが再生産される状態の映画には全く興味が持てない、そんな困った2,3年になっていた。
「うたかたの日々」は目に見えるものを映しながら、不可視のものを描く(あるいは浮かび上がらせる)ということの、一点突破を果たした作品だと思う。
感想を頭でモヤモヤと巡らせながら、家にあるDVD を掘り起こして観ているうちに気付いたのが、今のコロナ過の現状はすでにどれもこれもかつての映画に描かれていた、ということだ。
「未知との遭遇」ももはや意味が変わっている。「マッドマックス3」も。「ミッションインポッシブル」も。
それらには、これまで気づかなかった共通項があるように感じられる。
コロナ以前の世界がまだこれからの時代に先立って「目に見えない、形にならない何か」が秘かに不安や警告、希望みたいものの形でこめられている。
これらを作った製作者たちは、それを知っていたのだろうか。意識的に意図していたのだろうか。
「うたかたの日々」で感じたのは、その「意識できないものに直感すること」こそが映画の大切なコアだ、ということだ。
その直感が拾うべきものは、今もなお自分たちの目の前に展開される現実の中に明示されている、と。
曖昧な精神論をぶっているわけではない。その直感に基づいて撮影技術を用い、編集技術を用いた結果、スクリーンに投影されないものが、見ている側に確かに届くという事実の話だ。

ちなみにこの映画はほぼ、プライベートフィルムに近い作品のため、公開されることはない。高円寺シアターバッカスでのみ鑑賞できるという、まるで往年のフィルム映画のような作品となっている。その意味ではいまは情報になりすぎた映画の、体験という要素を取り戻すものでもある。

思えば、自分が90年代の学生時代にはこうした感触を与えてくれる自主映画作品も時折、出くわすことがあった。プロの作品においておや、だ。「うたかたの日々」はじんの監督が脚本を書かれた「ノーライフキング」、あの作品のクライマックスと同じ直感が描かれている、「うたかた~」を観ながらそう思えてならなかった。

『うたかたの日々』(2020-)
『うたかたの日々2』(2021-)

2021年、再びの非常事態宣言下
「うたかたの日々2」撮影続行中!

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