夏の終わりの夢幻空間
『海街奇譚』
1 week

    

2024年8月24日(土)〜30日(金)
19:00〜

入場料:
予約1,500円
当日1,800円

ご予約はこちらから
https://forms.gle/K4LR7eJaxGJ4D7XB9

     

    

『海街奇譚』公式サイト
https://umimachi-kitan.jp/#

    

特別対談 チャン・チー×串田壮史
「越境するアートハウス映画の“表現と視座”」

離島の港町を舞台に描かれる幻想的なビジュアルイメージをモスクワ国際映画祭はじめ高い評価をチャン・チー監督と最新作『マイマザーズアイズ』にて世界主要ホラー映画祭での受賞経験を持つ串田壮史監督との対談では、共にアジア出身の監督でありながら、自国の文化にとらわれない自由な発想と表現を国際マーケットでアピールする重要性と、減少するインディペンデント映画の劇場公開においては自分達が最後の世代かもしれないという危機意識も露わにした。

    

串田:映画『海街奇譚』を面白いと感じたのは、まず、主人公が俳優業という設定です。俳優であるからこそ、本当の自分を隠しつつ、自分が考えた役をこの街で演じているに過ぎない、信用できない語り手として存在しており、もはや今の時代は何が現実で何が嘘かを区別せずに生きるべきであると、強く訴えられました。私たちが今生きるべき姿を提示している、とても現代的な映画ですね。AIとか、役というアバターでの生活、時代に根差している作品です。

チャン:あなたの前作『写真の女』にも同じような現代性を感じましたよ。加工で美しく盛った写真を自分自身の姿だと思い込んでいく様子は、とても現代的です。より作家性が際立ったのが、『マイマザーズアイズ』ではないでしょうか。私と串田監督は同世代の映像作家でお互いイギリスで映像制作を学んだ出自も共通しています。

串田:私の監督した2作品はどちらも「デヴィッド・クローネンバーグの影響を受けた」と評されています。意識した自覚は無いのですが。

チャン:『海街奇譚』を海外の映画祭で上映したとき「冷たいマルホランド・ドライブのよう」とデイヴィッド・リンチ監督作品との親和性を指摘されました。私は意識しましたよ(笑)。

串田:それはチャン監督が映画を撮るにあたり、中国国内だけではなく、最初から海外の国際映画祭で勝負しようという意気込みがあったからですよね。青を基調とし、昼と夜でその色彩設計が異なるバランスで調整されている美しさは、舞台演出を映画として昇華していると感銘を受けましたし、俳優さんたちの演技も抑制が効いていて、アジア映画に留まらないという洗練された雰囲気に満ちていましたね。自戒を込めて言うと、日本のインディーズ監督の作品は身近な暴力を描きがちで、創造力が半径数メートルの身近な世界で止まっているんです。

チャン:『マイマザーズアイズ』にも暴力が出てきましたね。しかし、とても芸術的であると感じましたよ。中国は審査制度があり、過度な暴力表現は出来なかったため、『海街奇譚』では、主人公がカメラを使い、撮影という行為でもって殺人を行う抽象的な暴力演出を行いました。チェロの弓で人体を引き裂く『マイマザーズアイズ』しかり、私たちは芸術を生み出す道具を用いて殺人を描くという唯一無二の共通点がありますね。

串田:作家自身が描きたいという自由な発想を用いて、アートハウス映画を作る環境は、年々厳しくなっています。私もあなたも自身で制作したインディペンデント映画を映画館で上映できる最後の世代になるかもしれません。最近は、現代的な作品作りは映画の在り方そのものを考え直す時期に差し掛かっていると感じています。

<チャン・チー監督プロフィール>

1987年、中国浙江省寧波生まれ。

ノッティンガム大学国際コミュニケーション学科卒業、北京電影学院演出科修了。舞台演出家、舞台美術家としても活動。2010年から2015年まではCMや短編映画などを手がけ、2016年に中編『Edge Of Suspect』でデビュー。2019年に長編デビュー作『海街奇譚』にてモスクワ国際映画祭審査員特別賞を受賞。2021年の長編第2作『ANNULAR ECLIPSE』は釡山国際映画祭に出品された。学生時代から演劇を学んでおり、演出を手がけた最新の舞台は、2021年に上演された戯曲「三字奇譚」。同作品は浙江省文化芸術基金の資金提供対象に選ばれている。

<串田壮史(くしだたけし)監督プロフィール>

1982年大阪生まれ。ピラミッドフィルム所属。2020年に発表した長編デビュー作『写真の女』は、世界中の映画祭で40冠を達成し、8か国でのリリースが決定している。長編第二作『マイマザーズアイズ』は、スクリームフェストやフライトフェストなど、世界の主要ホラー映画祭に選出されている。現在、長編第三作の製作中。

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