ステートメント:「高円寺シアターバッカス」REBOOTにあたって

疫病との戦いは終わった訳ではありません。
また、世界中のシアター、ライブハウス等と同じく、存続の為に待った無しの状況であるのは、バッカスもまた同様です。
ただ、今考えているのは、「オンライン・チャリティー上映」や「ミニシアター・エイド基金」で頂戴した皆様からのご厚志に、いかにご恩返しをするかということであり、それはつまり「何を生み出していくか、創り出していくか」ということに他なりません。
日本国内では、公的支援への仕組み作りも端緒につき、「どこかの誰かが何かをしてくれるのを待つ」のではなく、ものを作る人たちとしてのリアクション、難しい現実からの挑戦に対して、いかに応戦するか、というフェーズに入ったと考えています。

具体的には
1.今まで以上に「映画創り」そのものに直接関わっていく
「オンライン・チャリティー上映」31人の監督の一人・若松宏樹監督の最新作へは、プリプロダクションの段階から積極的に利用していただき、人的な支援も含めて制作側の一員として参画させていただいております。
また、新しい演技の形を模索するワークショップ、新作映画のキャスト・オーディションなど、制作のトリガーになる企画や、スタッフ試写・完成披露上映会などのエポックにも関わっていきます。
「実相寺昭雄研究会」との連続企画「実相寺昭雄Day&Night」を再開いたします。実相寺監督ゆかりのゲストの方々にお話を沢山伺わなくてはなりません。
私たちがお話を伺い、継承していかなくてはならない宝物が、日本には無数にあります。実写だけでなく、アニメーションの世界も同様です。お話を直接伺える時間は残り少ないとも言える状況で、待つのではなく、私たち後続のランナーがお願いをして、お話を伺う機会を増やしていきます。
それは、後続のランナーたちのクリエイティビティと直結していきます。

2.配信/制作スタジオとしても機能していきます
幾多の名場面を生み出してきたバッカスの舞台は、いわば「求心力」を生み出す場所です。その場でしか味わえない瞬間、そこでしか出会えない人との出会い、それこそがバッカスの価値の中核でした。それは変化をしていかなければなりません。
本年初頭より「求心力」の反対の「遠心力」を希求していた矢先のコロナ騒動ではあります。
もう当たり前の事になっていると思いますので、あれこれ言及しませんが(なりが小さいので、必然的に三密になってしまうのが申し訳なく)、配信/制作スタジオとしても機能していきます。
一つだけ宣伝させていただくと、バッカスでの上映を「スクリーン1」、それに加えて配信のプログラムを「スクリーン0」として開設します。
バッカスが手がける配信ですので、「どいつもこいつも、骨の髄までありきたりだ」ということにはならない(はず)です。配信というテクノロジーの恩恵は思い切り追求していきますし、とはいえ、テクノロジーに振り回される愚はみっともないだけですので、皆様のお力をお借りしながら、バッカスらしい新しい表現のチャンネルを構築していきます。

3.ジャンルとしての「マイクロ・シアター」の確立を目指します

「オンライン・チャリティー上映」や「ミニシアター・エイド基金」は民衆レベルでの支援の動きですが、同時に公的支援への働きかけ、仕組み作りへの取り組みも始まっています。
「ミニシアター」が文化の多様性を担保している、という見方に異を唱えるものでもありませんが、さらに小規模の「マイクロ・シアター」というサブカテゴリーが存在することもまた事実。例えばバッカスみたいな。子供向け絵本の名作「しょうぼうじどうしゃじぷた」の世界ですね。(興味のある方はぜひ)
寺山修司さんの「天井桟敷」や、唐十郎さんの「状況劇場」の時代に形作られた法律では、現在の多様な状況に全く追いついていないのも、事実であります。
せっかく公的機関と関わり合いをもつのならば、こちらの態勢を整え、いっしょに新しい法秩序をつくっていく作業を始めたいと念願しています。手間暇かかるのは、もとより存知。(どこかの誰かが考えた、頓珍漢な仕組みでは。。。)長い長いスパンの取り組み、農作業のようなお話になると考えています。、

バッカスが指標とすべき3人のクリエイター

その上で、バッカスが指標とするべき3人のクリエイターを挙げたいと思います。
人の振る舞いの凝縮が文化であるとすれば、これらの先達たちの歩みが、これからの行動の指標となることでしょう。
創り出すものは作家自身の責任になるもので、人間の知恵としてコントロールされていれば良いと考えますが、やはり人が創るものである以上、文化そして芸術は、人に始まり、人に帰着します。
文化の力をバッカスは信じます。

 

ロッド・サーリング

1950年代後半、マッカーシズムの余韻での厳しい検閲の中、「正しくものを語るために、SF・ファンタジーの力を使い」傑作SFアンソロジー「ミステリーゾーン(The Twilight Zone)」を創り上げた稀代のクリエイター・脚本家です。
日本での評価があまりにも低いのが不思議でなりません。母国アメリカではスピルバーグを筆頭に、「ミステリーゾーン」に思い切り影響された世代が、ハリウッドの中核を担っています。
短編小説の王国アメリカの根源的な力とも直結していて、まだ確立していない「短編映画」の源流であるとも言えます。
製作当時の毀誉褒貶をものともせず、結果として、リチャード・マシスンやチャールズ・ボーモント、ロバート・レッドフォードやリチャード・キール、ついにはレイ・ブラッドベリまで「ミステリー・ゾーン」に引きずり込んだバイタリティも驚嘆に値します。

 

ロジャー・コーマン

言わずと知れたB級映画の帝王。今回のコロナ騒動でも、「おウチで撮った映画をこっちに送ってね」映画祭を主宰し、優秀な犠牲者=人材の発掘に余念がない御大、さすがです。
2009年にアカデミー名誉賞を受賞したのは、ジェームズ・キャメロン、ジョナサン・デミ、デニス・ホッパー、ジャック・ニコルソン、ピーター・フォンダ、ロバート・デニーロ、マーティン・スコセッシ、フランシス・フォード・コッポラ、ロン・ハワードその他多数の綺羅星のごとくのコーマン門下(ですよね)が頑張って、皆んなで100本の映画を作り、しかもコーマンは10セントも損をしなかったからであります。
加えて、一連のエドガー・アラン・ポー原作の作品だけでなく、監督作「侵入者」(The Intruder/1962)の社会派としての一面もとても重要です。(「侵入者」原作・脚本・出演は元気な頃のチャールズ・ボーモント。ちゃんとつながっています)
大なり小なり経済的な動きを伴う「映画」に立ち向かうとき、コーマン御大の顔を思い浮かべています。

 

黒澤満

日本映画には偉大なるクロサワが3人もいます。黒澤明監督、黒沢清監督、そして東映セントラルフィルム(セントラル・アーツ)の黒澤満プロデューサーであります。
なによりキャリアの出発点が劇場支配人であり、日活撮影所所長であり、「ロマンポルノ」というジャンルを創りあげ、松田優作さんとともに「遊戯シリーズ」、そして傑作テレビシリーズ「探偵物語」を世に放った方です。
現在バッカスのスーパーバイザーをお願いしている、じんのひろあきさんの脚本家デビュー作が、ロマンポルノ最後の作品「ラスト・キャバレー」(金子修介監督)というのも何かの縁と、勝手に思っています。(満さんをよく知る方々も周辺にチラホラといらっしゃり、現在丸山は意識しまくっています)
バッカスの活動が、何か日本の映画に貢献できるのならば、それは黒澤さんの背中を追いかける事で、見えてくるのではないかと考えています。

 

終わりに

あとはDo it.です。
引き続き疫病との戦いで、(あるいはそれ以外で)大嵐に巻き込まれることがあると思いますが、そこはケセラセラでしょう。
バッカスの活動で出来上がるもの、バッカスで上映する作品、配信でお届けする作品、直接創り出す作品が、「クリエイターズ・ラボ・バッカス」にとっての表現となります。
今までも、これからも、です。

2020/6/14
クリエイターズ・ラボ・バッカス
代表 丸山大悟

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